読書

2020年7月19日 (日)

仁木悦子

Book_20200719172001 時代物と探偵物は、限りが無いので読まない事にしていたが、最近何でだったか忘れたが「猫は知っていた」で乱歩賞を取った仁木悦子を知る。

4歳の頃胸椎カリエスで寝たきりとなり、後数回の手術で車椅子生活が出来るようになった。その後これも車椅子の歌人、後藤氏と結婚、その間童話や推理小説を書き続け、58歳の時、腎不全で亡くなる。

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探偵物(今は推理物と言うらしい)は結構読んだ。ハヤカワミステリーでアガサクリスティーのは大体読んだ気がする。「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺人事件」等の題名を覚えているが、中庭に面した四囲の部屋の場面だけ、記憶にあるがどの小説だろう。

江戸川乱歩のは全部読んで売ってしまい、手元には数冊のみ。探偵物、時代物、SF等キリがないので遠ざかっていたが、それ故、同時代にこんな作家がいたのを、知らなかったとは全く迂闊な話である。

今「子供たちの事件簿」3冊「仁木悦子少年小説コレクション」3冊「仁木悦子長編推理小説全集」5冊等を入手し、順次読んでいるが、明るい推理物で中々良い。

口数は少ないが、ソプラノで明るく、車椅子でこれだけ書いたのは、典型的な身障者の、負けるものかのプラス面が出たのであろうか。学校に行けない訳だが、次兄による厳しい教育が大きかったらしい。姉は隣に住み推理物を好み、アガサクリスティーはそこから読んだと。

長兄は戦死、呼びかけで集まった同じ境遇の人による文集「妹たちのかがり火」3冊。(4冊目は亡後、会によって発行)御主人による「猫と車椅子」も入手。

 

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2020年7月15日 (水)

女帝小池百合子

Book_20200715111601 ノンフイクション作家の石井妙子が、今年5月出した440Pの本だが、力作らしい。普通人物伝は褒めるものだが、これは徹底して批判らしい。

レビユーが700余となり、概ね支持する内容だが、反論も無論ある。しかしやはり人物の評価としては余り芳しくないようだ。

私も関東大震災時の朝鮮人問題への態度が、どうも納得できない。都知事選前だったのに、影響を与えなかった感だが、反対候補が駄目過ぎた。

いずれにしろ大冊だし、都民でないので買わず、石井妙子著「日本の血脈」を注文した。

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インタビュアーの調所(ズショ)一郎氏と石井妙子氏 ニュースサイトハンターより

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2020年4月24日 (金)

旅の重さ

Book_20200424093201 素九鬼子著「旅の重さ」

「本の話」で戦後第1回芥川賞を受賞された、作家の由起しげ子さんが1969年亡くなられた時、机上に1山原稿が積まれてあった。ファンから送られて来た小説や随筆だった。

由起さんの芥川賞への機縁を作った、編集者の八木岡英治氏が、この整理に当たる事となったが、その中に、如何しても心を捉えて離さぬ作品がこの「旅の重さ」だったそうだ。

素さんによると、そのうち読んで見ましょうとの由起さんからの返事を戴いたそうだ。八木岡氏は素さんの住所が判らず、どうしてもとの思いから3年後の出版となる。それを素さんの知人が以前読んだ気がと知らせ、本人名乗り出となった。

母親の下から四国の太平洋岸を徒歩旅行する、16歳の少女の物語で、中々楽しくも苦しい旅行記となっており、「みずみずしい感性と文体は、青春でなければ表現できない無垢のもの」と解説は褒めている。 ★5 DVDでもあるので見るつもり。

 

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2020年3月10日 (火)

トラピスチヌ修道院

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 Book_20200322110801 野呂希一著「トラピスチヌ修道院」

2009年11月、16~19日、家内と3泊4日のバスツアーで、北海道旅行に出掛けた。函館、登別温泉、札幌泊で、五稜郭、大沼、洞爺湖、富良野、小樽等を見物した。その中の1つが函館の「トラピスチヌ修道院」だ。もう11年前になる。

家内の遺影は小樽の倉庫街で写したものだ。ツアーなので詰め込み過ぎの感があり、暖かい頃1~2ヶ所をゆっくりと思っている中に、月日は電光の如くである。

この旅行で、彼女が一番感銘を受けたらしいのがこの修道院だ。此処は途中迄は入れて、修道女達の居る所はその奥。土産物を買う。

彼女は物静かで無口な性格とて、色々人に誤解されたり、嫌われたりだったらしい。成績表は何時も、人ともう少し話すようにと書かれている。母親とも上手くゆかず、私と結婚の時は、家を出られるなら誰とでも良いの心境だったらしい。

一生世に出ない修道女の生活を目の前にして、何と言ったか忘れたが、凡そ感想を述べない人が、感動していたのを思い出す。この本を見付けたので、遺影に今置いてある。修道女達の静謐な日常が表現され、如何なる名文も要らない作品集だ。 ★5

 

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2019年10月14日 (月)

介護のうしろから「がん」が来た!

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篠田節子著 介護のうしろから「がん」が来た!

篠田節子の本は、今まで40冊程読んで来た。中でも「アクアリウム」「静かな黄昏の國」が一番気に入っている。買っているが未読は「ブラックボックス」「インドクリスタル」「冬の光」。文庫待ちに「竜と流木」「肖像彫刻家」「鏡の背面」があり、読んで損しない作家だ。短篇より中、長編が良い。

ところで「介護の・・・」が出て新聞で紹介され、早速読んだ。忙しい執筆活動は元より、認知症の母親の介護に明け暮れている所に、乳がんが発見され、テキパキと明るい性格ではあるが、よくもマアと感心する。乳がんはステージ1~2で手術は良い病院で成功したようだが、予後は大変だったようだ。

行動的なお母様の転院も大変で、その日と文学賞の授賞式が重なり、ハラハラの展開となる。去年認知症から来る老衰(直接の死因は誤嚥性肺炎)で亡くなった家内だが、振り返ると1年位前から認知症の兆候があった。篠田さんのお母様と違い、大人しく文句を言わない性格だったので、随分助かった事が判り、少し慰められた。

「鏡の背面」(吉川文学賞)は入院中手を入れたらしい。これからも大変と思うが、御主人や心配してくれる母方の親類も来てくれたりと、人それぞれで、この体験記はとても参考になった。 ★5

 

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2019年3月 7日 (木)

我が家のヒミツ

Book奥田英朗著「我が家のヒミツ (集英社文庫)

「家日和」「我が家の問題」と読んで来て、この「我が家のヒミツ」で短編集3部作。各6短編から成り、夫々最後の1編は続物になっている。

「家日和」の”ここが青山”の青山は私のハンドルネームでもあり(これは山の記録ホームページ”青山白雲”から採る。もう一つ”かりさか”は雁坂峠から採った)。”青山白雲”とは、”青山元と動かず、白雲自ずから去来す”からだそう。

ここでは”人間(じんかん)到るところ青山あり”から来ており、世の中何処にでも骨を埋める場所があり、大望の為には郷里を出て大いに活動すべきの意だそうだ。

どの短編も良いが、「我が家のヒミツ」の”手紙に乗せて”が丁度私の立場を書いたもので、涙しながら読んだ。

主人公の父が伴侶を失い、すっかりしょげて食欲も無くなり、それを聞いた上司が心配してくれる。その上司も少し前、妻を亡くしておかしくなり、鬱病で精神科に罹ったそうで、御陰で回復、この人との手紙のやりとりで良い方向に向かうというもの。

私も予想しなかった時に家内をあれよと言う間に亡くし、その喪失感は未だに深く、これを癒して呉れる人が見当たらないのが現状だ。

この短編では、人は近しい人を失った者と、そうでない人に別けられるというのを納得せざるを得ない。 どの短編も面白く良く出来ており★5.

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2019年1月29日 (火)

ネガティブ・ケイパビリティ

Book帚木蓬生著「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書)

家内が去年の暮れ亡くなり、突然受けた心の痛み、少しは和らいだかに思われるが、未だ何かにつけ思い出しては涙の滲む毎日だ。

「山の中の一軒家」のテレビ番組が好評で、私も欠かさず見ている。行くと見ているよと言う人が多い。昨日のは奥様が信仰する或る宗派の別院が山中に建てられ、それを任された。御主人も感化され僧侶となる。しかし奥様が亡くなり御主人が後を継ぐ事となる。

それから大分経つらしいのに、思い出して涙され話が進まなくなる場面もあり、貰い泣きした。しかしお坊さんでさえそれなのだからと、私も少し慰められた。

ところで精神科医の帚木蓬生は、隅々まで行き届いた小説で素晴らしく、随分読んできたが、本書は医学啓蒙書に入るのだろう。

世の中は受験に象徴される様に、結果を如何に早く出すかという事で全て進行しており、これはポジティブ・ケイパビリティであると。医者の治療も例外ではない。治せないとなると困ってしまう訳だ。

これに反してネガティブ・ケイパビリティとは、どうしようもない事に直面した時、答えを出そうとせず、その状態に耐えて行けば、やがて何とかなるというものだ。

今の社会特に医療の現場では、治療により治すことに全力が注がれているが、治せそうもない時の患者や家族への対応はどうか。

家内の場合も色々手を尽くしたが、所詮治らない状況になったと見られ、先生方もそれなりにやって下さったと思うが、残された私としては、未だショックから回復出来ていない。しかし本書を読んで幾らか気持ちが収まった気がする。 ★5

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2018年4月 3日 (火)

わが母の記

Book井上靖著「わが母の記 (講談社文庫)

井上靖のものを大体集め、順次読んでいる。時代物やシルクロード方面と、広い範囲の著作がある。

随分前「しろばんば」というのを読んだ。伊豆は湯ヶ島の郷里で祖母に土蔵で育てられた小学時代を描いたもので、凄い田舎の情景が面白かった。

25歳頃から書き出すが、43歳の時ようやく「闘牛」で芥川賞。しかし83歳で亡くなる迄次々と発表したので数は多い。

男女の仲を描いたものはどれも抑制の利いた、爽やかな読後感が良い。男が事業家であるのが多く、今読んだ「黒い蝶」「貧血と花と爆弾」も同系の物だが、前者は一応良く出来ていると思ったが、後者は登場人物が多すぎ、その性格もよく分からぬまま詰まらない終わり方だった。

そこへ行くと映画化もされたという母の回顧録「わが母の記」(花の下、月の光、雪の面の三部作)は静謐という言葉が最初から最後まで感じられ、何回でも読み返したい作品だ。 ★5

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2018年2月 8日 (木)

安楽病棟

Book帚木蓬生著「安楽病棟」静岡がんセンター病棟にて。

12月の入院では、井上靖「海峡の緑の仲間」そして1月の入院では源氏鶏太「青空娘」と菊池寛「無憂華婦人」を読み、そしてこの帚木蓬生の600ページ余の文庫本を読み終わった。「青空娘」と「無憂華婦人」は★5。

予備の本を家に用意しての入院だったが、傷の痛みは兎も角、リハビリ等色々あったし、2~3週間の予定が1週間となり、これだけで終わった。

上記3作は、今は死語となった女性の・・・ですわ。・・・ですの調だが、「安楽病棟」はスマホ少し前の話なので、痴呆症、看護婦等で語られている。

ある内科病院の認知病棟での物語で、初めはそこに入る患者家族の話として進行。途中からそこに勤める城野看護婦の対応の記録となり、終末医療に疑問を持つ香月医師の行動に、悲しみを持ちながら終末へと向かう。

認知症現場の見事な描写と、結論の出そうにない終末期医療の問題点を、中村桂子が解説している。彼女の本は何冊かあるが難しく途中挫折していたが、この名解説には感動した。そして帚木医師の医療物には失敗作が無いもののようだ。 ★5。

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2017年9月 4日 (月)

四国巡礼記

Book東京新聞で俳人「黛まどかの四国歩き遍路」が連載中で、好評らしいが私も愛読中。似たような著書が沢山出ている。家田荘子「四国88ヶ所つなぎ遍路」月岡祐紀子「平成娘巡礼記」辰野和男「四国遍路」等持っているが未読。

どれも同じような体験談だが、それぞれ面白い。(と言ったら失礼か)。歩き、自転車、バイク、車と、体調、費用、時間等それぞれ理由あってのことだが、矢張り基本は歩きと思う。現在道標、宿等昔に比べ良くなっている様だが、大変な事に変わりはない。

何といっても今の様に観光化していない、大正の頃の高群逸枝「娘巡礼記 (1979年) (朝日選書〈128〉)」だろう。仕事や三角関係から逃れ、熊本から24歳で四国巡礼に出た時の記録だ。地方紙に記事を送る約束で船賃を貰っての出立で、いきなり野宿だった。

今と違いお遍路お断りの風潮の中、行倒れもあった時代だけに、娘一人の道中はどんなに頼りなかったことだろうが、後「火の国の女の日記」等を書く女性運動の草分けだけある。途中大分のお爺さんと同道したりもしながら、何とかやり遂げた感動物の紀行だ。

本人は記事になったものは見ないで終わったらしく、詳細は解説にある。それだけに60年後やっと出版された文章は、本人が見たら手を加えたい所もあったろうが、それが却って生々しさを醸している面もあり、★5だ。

最近亡くなった作家、車谷長吉と詩人高橋順子夫妻の札所巡りも良い。車谷長吉「四国八十八ヶ所感情巡礼」。順子が怪我したりして大変な道中だ。こちらは雉撃ちが矢鱈で★4。

四国88ヶ所を遍路、西国33ヵ所を巡礼と言うのが正しいそうだが、混用されている様だ。スペイン、サンティヤゴにも巡礼道があり、檀ふみ等の本も出ている。最近増えた外人も、そちらから来た野宿のバックパッカー等が多い様だ。

関東では秩父にもあるらしいが、ここ伊豆にもあるとか。私も行ってみたいのだが、脚がもう許してくれそうもない。指を咥えて巡礼記を見て我慢するか、というのが今の心境だ。

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