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2017年8月13日 (日)

逃亡

Book帚木蓬生著「逃亡〈上〉 (新潮文庫)」「逃亡〈下〉 (新潮文庫)

医者であり作家の帚木蓬生(ははきぎほうせい)を何で知ったか忘れたが、この変ったペンネームは、源氏物語の2番目の題名帚木と、末摘花の出てくる巻から蓬生を採ったそうだ。

そのペンネームも医学部を受け直すこととなり、以前卒業した高校で、もう結婚や就職をしている筈と先生に怪しまれぬよう、偽名として使ったと。TBSに入社したが碌でもない仕事をやらされ嫌気がさし、医者への道を進んだそうだ。

精神科医らしい作「閉鎖病棟」から読むが、百姓一揆を扱った時代物「天に星地に花」も良い。そしてこの「逃亡」、戦時中の憲兵が敗戦となった時、逃げ回った末結局捕まるが、あっけない最期で、戦勝国の軍事裁判のいい加減さを知る。

私は憲兵と言うと国内で威張っていた事しか知らず、香港でのこのような活動があったことが、多くのBC級戦犯を生んだことを知る。

巣鴨プリズンは今サンシャインビルとなり、何の跡形もない。私も東條以下A級戦犯にディスバイハンギングと、次々に判決が読み上げられるラジオが今も耳に残っている。

天皇の責任が語られ、本当にその通りだとも思ったが、作者は他の元憲兵にそれを語らせ、主人公はこうなったのも自分の責任も皆無でなく、全て戦争のなせる業であり、仕方がないのかという立場だ。

心理状態は元より非常に細やかに描かれており、文庫本1200ページを一気に読んだ。 今は亡き久世光彦の名解説がある。 ★★★★★

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